ステイトメント

新保裕希

日本画とは一体なんなのだろう。大学に在籍していた時、日本画とは素材論で説明するものだと思っていた。講義も素材と技法の説明しかなく、それしか知らなかった。今回の展示で共に参加する事になった日比谷さんの様に、自由な表現を許してくれる環境ではないのが東京芸大だった。大学によって方針は違うのは当たり前だと思ってしまっていたので、芸大の不変の考えに疑問を持ってはいたけれど、その流れに乗って4年間を過ごして来た。

「絵って何だろう」というテーマのグループ展もかつて行ったが、結局私たちのような知識もボキャブラリーも持たない者に答えは出なかったし、自分の専攻絵画について、学ぼうともしなかった。それは周りの人間の殆どがそうだったと今でも覚えている。

「絵が描く事が好きだから」という理由だけで進学してきた東京芸大の日本画。ここで、ほぼ初めて「日本画」と言われている絵画の素材と技法を習い、描き始め、早6年。3年間の浪人時代に数百枚の絵を描いて来た濃密な時間とは裏腹に、学部4年間で仕上げた作品はその半分に満たないだろう。かつての集中力も続かない。

己の作品に対して強いこだわりも持たず、その様な状態で大学院にも落ち、「絵を描いて行く」という非常に無責任で勝手な気持ちで、卒業した東京芸大。万が一大学院に進めていても、この自分とこの環境が変わらなければ、学部の延長線で終わるだろうと分かっていたせいか未練は無かった。ぬるい空気と特殊な狭い世界に入り、漠然とした不安の中、楽しい仲間に囲まれて過ごした4年間は何だったのだろう。当時はそれなりに本気だったかもしれない。でも、数十年後をリアルに考えられていなかった。卒業していった数多くの先輩の何割が、「日本画家」として続けているのだろう。完全に甘やかされていた自分。社会を知らなかった。

教授世代が学生だった時の様に景気も良くない日本。ある先生が、「バブルの時は、描けば売れるの繰り返しだった」と言っていた。とても羨ましい話だけどそのような時代はとっくに去ってしまったし、絵と共にあるにはどのように生きて行けば良いのか、という話は、先生からも生徒からも何も無かった。今の日本画が、私たちが、「愚鈍」と呼ばれる理由が解る。以前村上さんに「学部の四年間は無駄だった」と言われても、何も言い返す事が出来ない。

そんなどうしようも無い状況を自覚した中、今回の震災が起こった。あって当たり前のものが一瞬で無くなってしまった震災。その日以来、眠くて眠くてたまらない日々が続いている。自分で望んで得た情報に勝手にショックを受けてPTSD気味になるなんて情けない。

この時期、今回の展示に参加させて貰える事で、先ずは自分が変わらなくてはいけない事が分かった。同時に私の時と同じような、中途半端な不安や想いで日本画を描いている学生に、この展示を通してきっかけを与えなくてはならない。影響を受けるばかりだった保守的な立場だった私でも、与える手助けが出来るのなら関わりたいと思った。「本来あるべき日本式絵画=日本画」とは何かを、まさに今の社会の中の、若い世代が提示する時だと思う。

暖かい夜, 2011

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