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私はしばしば日本のオタク文化を題材にして絵を描く。しかし最初に断っておくと、それは私がオタク文化を好いているからではない。寧ろ逆だ。大嫌いだ。しかしそれでも題材にするのは、我々の世代では、最早オタク文化の中にしか日本人の誇りは見出しえないという諦めがあるからだ。

兎に角私はオタク文化が嫌いだ。変化や個性の大半を拒み、どこかで既に見たような、テンプレートの如きイメージをただただ生産し消費し続ける、その姿勢。社会的認知度が上がってきたとは言え、依然オタクとそうでない者との壁は厚い、その閉じた市場。おまけに海外市場開拓もままならず、0年代前半をピークに規模が縮小し続けているとは何たる事か。

その一方で私は海外のゲーム文化、所謂洋ゲーが大好きだ。変化や個性に富み、技術革新と表現の進化が共に著しく、市場規模もハリウッドを超えた。何という事だ。あらゆる面で日本のオタク文化とは対照的だ。彼らのダイナミックさ、誇りに満ちたその姿に自分は常々憧れている。彼等の様な誇りを私も持ちたい。彼等の様な圧倒的な作品を私も作りたい。毎夜の如くそう夢想する。

ここまで書くと、人からよく言われる事がある。そこまで海外贔屓なら、実際海外に渡って海外で似たものを作ればいいのではないかと。確かにそれは常に考えている事ではあるが、しかし現状私は日本に留まっている。何故か。それは紛れもなく、私が日本人だからである。

考えてみたまえ。何故彼等はあそこまでものを作れるのかと。それは誇りがあるからだ。技術に誇りを持ち、自分達が築いてきたゲームの歴史に誇りを持っている。更には彼等個々人の人生の生い立ち等といったパーソナルな部分から、彼等が居住する環境、国家、その文化や歴史等といったパブリックな部分まで、彼等は自らの構成要素全てに対し誇りを持っている。それを作品という一つの形に濃縮しているからこそ、出来上がってくるものが分厚い。

そこに私の様な日本人がひょこひょこと出向いた所で何が出来るのか。彼等の力の源を知らないまま、表面上似た様な事をやろうとして、どれだけのものが作れるのか。また知ったら知ったで自分達との違い、確固しているが故の共有の出来なさを痛感するだけではないのか。

私は日本人なのだ。紛れもなく。それは個人的な意思を超越した、運命の様なものである。どんなに日本の事が嫌いであろうと関係ない。例え国籍を変えたとしても、20数年日本で生きた事実は変わらない。私は私の意思に関わらず、日本人である事を宿命づけられているのだ。

しかし思う。この変える事できない宿命を理解し、肯定する事が誇りというものではないのか。自らの出生を知り、そのオリジナリティを見出し、磨き、出力する。それが誇りある、圧倒的な作品を生み出す上で重要な事ではないのか。

私が憧れる海外のゲーム文化、そこに居る人達はこれを半端なく出来ているのだろう。同様にもし私が彼等に匹敵しうるものを作ろうと思うのであれば、彼らに匹敵し得る誇りを、日本人としての自らの内に見出さなければならない。そう自問して出た結論が、オタク文化だったのである。

嗚呼何という事だ。あれほど嫌悪していたものに頼るしかないという皮肉と矛盾。しかし他に何がある。我々の世代で、現在進行形で息づいている日本文化と呼べるものが、他にどれだけあると言うのか。

無い。少なくとも私には。言っておくと私はオタク文化は食わず嫌いをしているのではない。幼少の頃から今に至るまで、マンガ、アニメ、ゲーム等には絶えず触れ続けている。そしてその過程で各メディアの浮き沈みを目の当たりに、失望したのだ。だがどんなに失望してもここ以外に日本人としての誇りを見出しえない以上、その不満点を一つ一つ訴え、潰していくしかない。

それは時には絵で、また時には今回の様に文章で。そして今年の4月、私はゲーム業界に就職した。勿論日本人としての誇りを見出すため為に他ならない。かつて日本のゲームは世界に轟いていたが、今では海外勢に大きく遅れを取っている。それを建て直し、堂々と誇りを持って世界に日本のゲームを売っていく。そういう状況に再びしたいのだ。

さて、ここまで書いてきたのは私個人の日本人としての誇りを探る道程だったが、この誇りを見出したいという希求は、同世代に共通して内在するものだと思っている。その証拠が今回の『日本画ZERO展』だ。

この展示は題材こそ日本画という事でオタク文化とイコールではないが、日本人としてのアイデンテティを探るという意味で同一線上にあるものだと、個人的に解釈している。私含め参加者総勢20名。皆近い世代で、それぞれが自らのアイデンテティ、誇りの在り処を探っている。その探求の果ての、より良い作品、そしてより良い日本の姿を信じて、今回の展示に挑みたい。

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