村上福寿郎個展「グッドタイミングクラブ2012」

写真:鈴木心

東京に上京してきて50年。貧しい戦後日本を生き抜き、バブル経済とそのクラッシュを経験し時代に翻弄されつつタクシードライバーを続けながら、趣味の造形活動を続け、現在に至る。美術教育は一切受けていない。

鳥、魚、蝶、飛行機、人体のシルエットを厚紙に写し、それをカッターで切り抜き、日曜大工用のペンキで着色。既存の芸術の価値観とは遥か遠く、一般的に見て無意味な造形物を造り続けている。

展覧会のタイトル「グッドタイミングクラブ」の由来は、「人生いつでもタイミングが重要。

グッドタイミングが一番」と、戦後の流行歌、坂本九の「ステキなタイミング」を座右の銘とした村上福寿郎その人を表す前向きな思想のキャッチフレーズ。

今回の出展作には東日本大震災の発生時に制作していた作品もあり、震災で受けた思いを乗せた作品も多く展示致します。

戦後を生き抜いてきた一個人の時事雑感をのせ、愛情、ユーモアとペシミズムのないまぜが100点近い作品1つ1つに彩られます。

会期
2012年3月1日 – 2012年3月13日

レセプション
3月1日 18:00〜20:00

作品
インスタレーション
村上福寿郎 変遷
鈴木心によるスナップ

プロフィール
村上福寿郎

昭和9年福岡県北九州市門司区生まれ。小学校5年生で終戦を迎え、中学の時に母を医療ミスで亡くし貧しさの中、大学への進学は諦め、19歳で自衛隊員となる。

砲兵として勤務する傍ら、乗車可能な乗り物の免許を全て習得。
除隊後、23歳で東京へ上京後、鉄工所等を経て昭和36年タクシー運転業務を始める(同心交通)。

10年間無事故無違反を経て個人タクシー免許を習得し以降37年乗車勤務。2009年、引退。

以降、自身の中にあるドグマを造作物の中に練り込む制作三昧の生活を送る。

アーティスト村上隆、日本画家村上裕二の父。

村上隆コメント

福寿郎より福来る。グッドタイミングクラブ

私、村上隆の父、福寿郎の造り続けてきた
無意味に見える造形物の数々の展覧会を御届けします。

福寿郎は、20代中盤に東京に上京。私が生まれたころには貧しくも東京の板橋区坂下に居を構え、同心交通という会社でタクシードライバーをやっていました。

私の記憶の中での父は、タクシーを運転し続ける生真面目な労働者でした。と同時に、非常に貧しいエリアに暮らす、田舎からの移民。日本の下級階流の一家4人の家族を養う為に、睡眠不足の日々を生きていたように記憶しています。

我々が子供に充てがうおもちゃなどは高額で買え与える事が出来ず、持ち前の手先の器用さで、木材を切ったり貼ったり。船やおもちゃを造っては我々(私と弟に)にあてがい、そして、トタン板とプラスチックの波板で、掘建て小屋も作っていました。

当時、便所が掘り抜きの肥だめ式で、台風のとき等、近所の川が荒れ、洪水となり、そのときは便所の肥だめに水が入ったりもし、その水を汲み取る為に、糞尿を汲み出していた姿も思い出されます。
年に何度か、その便所の中に父が入り、下の方から「隆!」と名前を呼ばれて驚かす、そんな記憶が強烈です。

東京に来る前は北海道で自衛隊員として働いていたと言います。
「丸」や「世界の艦船」という軍事雑誌が好きで、家の中にバサバサと転がってました。

私が父から受けた影響の1つに敗戦の理由の刷り込みと、戦争への怒りがあります。

なぜ、日本は戦争に負けたのか。
なぜ戦争はこの世から無くならないのか。

時、まさにベトナム戦争まっただ中。
TVでは、戦後間もない事もあり、毎日のように戦争ドキュメンタリーが頻繁に放映されていました。

どうして原爆を甘受せねばならなかったか。ベトナム戦争に、なぜアメリカは突入し、敗戦国日本はこの戦争にどう加担しているのか。戦争は世の中の理不尽の塊ではあるのだが、なぜ無くなる事が出来ないのか。

自分の自衛隊入隊時の体験談。そういうことを戦争ドキュメンタリー番組を観ながら子供達に伝えるつもりもなく、懇々と1人でテレビに向かって吠えていました。

そんな話を聞きながら、子供用番組のウルトラQ、ウルトラマン、セブンを観ると、父の言う戦争への矛盾が解るような気がしてました。

タクシードライバーを続け、母もパートに出かけ、私と弟を育て、そうした合間にも、父は造形制作をなぜか続けていました。

今回展示する段ボールのような物にペンキを塗るだけの作品制作。

振り返ってみればもう30年以上もこの作品を作っています。
何の為に作っているのか?

ただ息抜きにやっているものだと思っておりましたが、それが最近まで継続し続けている状況を見て、なにがしかの意味があるのではないかと思い、父に色々話を聞くと作品制作時の心の中は、この世の理不尽への怒りが満ちているという。

作品の表面にはそうした怒りは一切見えない。怒りを練り上げる場としての創造活動の果てに出来た作品を一同に介して展示展覧をしようと持ちかけると「グッドタイミングクラブ」というコンセプトでまとめたい。と言い出したのです。

「人生いつでもタイミングが重要。グッドタイミングが一番」と、戦後の流行歌坂本九の「ステキなタイミング」に引っ掛けたネーミングは作品1つ1つに練り込まれた怒りとは裏腹なモノ。

なぜ?と聞けば、「この世の矛盾は日々の事。しかしそれが積もって生きながらえ振り返ってみれば、良き日日だった、そういうことさ」と。

戦争や軍隊の在り方を、考え続け、貧しくつましく、労働に勤しみ、その中で奇妙な造形物を造り続ける。

振り返ってみれば、彼の名は福寿郎。マンガのような福々しい名前。まさに、命名されたその瞬間が「グッドタイミング」だった。

意味と無意味とが混在した中に、人生における芸術の意義のようなモノが見え隠れしてくれば、この展覧会にも意味がある。
そう思うのです。

村上隆

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